「移動コスト」と「オフラインゆえの付加価値」が意識されるウィズコロナ

アフターコロナ・ウィズコロナという言葉が当たり前のように使われるようになりました。在宅勤務の浸透とあわせて、各種ITツールを使いこなすことで、直接顔を合わせずとも多くの仕事ができると認識され始めています。

一方で、オフラインで会うことの重要性を再認識する機会にもなっています。つまり、オンラインかオフラインかという2択ではなく、オンラインの可能性が広がったと捉え、使い分けをしていくことが重要だといえるでしょう。

ひとつ確実なのは、今後「オンラインでもできることか?オフラインでなければならないことか?」「オンラインでもできるが、オフラインだとより価値が出せるものか?」という視点が強く意識されることです。

オンラインでできること・オフラインでなければできないこと

多くの仕事がオンラインでできることが認識され、Zoomを使ったWeb会議、オンラインストレージを使ったファイル共有、ビジネスチャット用いたスムーズなコミュニケーションなど、在宅勤務でも不便を感じにくい環境ができあがりつつあります。

まだ紙文化が残っている企業・押印のために出社する企業もあるでしょうが、それもオンライン化しようと思えば既にできることです。オフィスで行う「作業」的な仕事は、かなりの部分がオンラインでもできると思います。

しかし、大がかりな機械を使う、工場を稼働させるような現場は、在宅勤務で済ませることは困難です(工場の全自動化が行われれば遠隔でも可能でしょうが)。飲食店など、接客とその場でのサービス提供に意味があるものもオフラインで残り続けます。物販店は売っている商品にもよるでしょうが、必ずしも「実店舗」である必要のない業態もでてくるでしょう。「店舗」と一口にいっても、立ち位置は異なっています。

このように、「オンラインでできること」「オフラインでなければできないこと」のすみ分けは確実に進んでいます。

すみ分けが進めば進むほど「オンラインでできること」をオフラインでやる場合、その意味が問われるのは間違いありません。

「移動コスト」と「オフラインゆえの付加価値」を考える時代

オンラインでできることの幅が広がったことで、オフラインの場は「移動してまで行う価値があること」なのかどうか、今まで以上に厳しくみられるでしょう。

例えば社外との打ち合わせ。これまでは客先に訪問するのが当たり前でした。ただここまでWeb会議が浸透すると、大抵の打ち合わせはWeb会議で済ますことが可能です。それを「わざわざリアルな場で行う」場合には、その価値が社内外で問われることになります。

特に分かりやすいのは出張です。一泊二日で遠方の顧客を訪れ、数件面談し、帰ってくる。ここには、宿泊費・交通費・移動時間というコストがかかっていますが、それをわざわざかけることで、Web会議では得られなかった成果を得られるのか?ということです。

このように、リアルな場で何かを行う場合には必ず「移動コスト」がかかります。移動する労力、移動するための時間、移動するためのお金。今まではなんとなく必要経費と思われていたものが、意識的にかけるコストとしてはっきり認識されるようになります。

移動コストを払ってもその価値があるのか。オンラインで済ませるよりも利益が増えるのか。費用対効果に見合うものかどうかを意識し、判断しなければなりません。

オフィスも同じ話だと思います。足元では、オフィスを持たない決断をした企業が取り上げられています。ただ、オフィスでの作業がオンラインでできるからオフィスは不要かというと、そこまで簡単な話ではないでしょう。

新人教育をひとつとっても、研修講義自体はWebで開催できたとして、OJTはどうでしょうか。すべてにマニュアルがあるわけではなく、職場の先輩がどんな仕事のやり方をしているか、同じ空間にいながら観察して得られるノウハウも多いはずです。オフィスがない場合、新人教育が果たしてうまくいくのか、まだ課題は多いでしょう。

組織への帰属意識、一体感、企業文化の面でも、オフィスが果たしてきた役割は大きいです。組織であることの強みは、共通目的をもち、個々人が貢献意欲をもって、コミュニケーションをとりながら進めていくことで発揮されます。オンラインでのコミュニケーションも一定の効果はあるでしょうが、リアルな同じ空間にいるからこそ生まれるコミュニケーションがあり、その場にいるからこその帰属意識もあり、職場の中で伝わる組織文化もあるように思います。

もちろん、業種や職種にもよってオンラインに移行しやすいかどうかの差はあるでしょうし、オンラインに合わせた組織体制に変わっていく面もあるでしょう。今までと全く同じようなオフィスの使われ方がされる、通勤するのが当たり前の時代に戻るとも思いません。

個人的にはオフィスと在宅勤務(リモートワーク・テレワーク)のいいところを取り入れるハイブリッド体制を模索していくべきだと考えますが、いずれにしても、多面的に、継続的に、「組織としての強みを維持向上させられる体制」を構築していくことが求められます。

(なお、本話題に関連して、「在宅勤務に必要なもの」をこちらの記事で整理しているので、あわせてご覧ください。)

以上、社外の打ち合わせとオフィスを取り上げ、その「移動コスト」と「オフラインゆえの付加価値」について考えました。判断の分かれる部分もあるでしょうが、ほぼすべての企業がこの2つを比較しながら業務の選別を行っていくことになるでしょう。

まとめ|オンラインの効率・オフラインの付加価値・再認識される移動コスト

コロナを機に、「オンラインでできること」の認識が明らかに広がりました。

  • オンラインでできること
  • オフラインでなければできないこと
  • オフラインゆえの付加価値が見いだせること

今後の仕事は、大きくはこの3つに分類されるでしょう。

オンラインでできること、かつオフラインと価値に差がつきにくいものは、オンラインで効率的に済ませる。そのためならITツールなどへの投資を惜しまない。

オフラインでなければできないことは、これまでの延長線上で効率化と高付加価値化を進めていく。

オフラインゆえの付加価値が見いだせることは、必要となる移動コストを常に意識し、それ以上の価値が常に付与されるような仕事へと高めていく。

ウィズコロナの時代では、これらの点を強く意識した経営が求められると考えています。

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