実は大切な「組織スラック」とは
コロナウイルスの影響で、日々マーケットが大きく動いています。下落傾向もそうですが、ここまでボラティリティが大きいとマインドが冷え込み、元々見込まれていた以上の影響が出てきそうです。
そんな環境下だからこそ、企業の耐える力が問われています。耐える力のカギとして、今日は組織スラックについて取り上げたいと思います。
組織スラックとは?その重要性は?
組織スラック(organizational slack)とは、「企業が持つ余裕資源」のことです。具体的には、余剰人員、余剰資金(内部留保も含む)、余剰在庫などのことを指します。
一見、余裕資源があるということは、資源を最有効活用できていないようにも見えます。投資家やレンダーはもちろん、経営者としてもヒト・モト・カネ・情報を余すことなく活用し、利益を最大化することを求める傾向にあるからです。
ただ現実として「余裕がない状態で経営をする」ということには大きなリスクが伴います。
例えば、足元のコロナショックの影響で飲食店やホテル等は大きな打撃を受けています。仮にぎりぎりの資金繰りを行っていた場合、この状況に耐えられる体力はないでしょう。資金繰りに窮し、廃業に追い込まれる可能性が高いです。
また少し違った観点では、今回のコロナショックでマスク等が品切れ傾向にありますが、ここでも在庫や取引先に余裕を持っているかどうかで、逸失利益が生まれるかどうかといった違いも生まれました。
このように、企業が経営環境の変化に対応する上で、組織スラックは必要不可欠なものです。組織スラックを拡大させたり収縮させたりして、企業の存続と成長を図っていくことができます。
組織スラックはイノベーションの種にもなる
さらに組織スラックは、環境の大きな変化に対応するための「予備の資源」としてだけではなく、「業務改善やイノベーション等の源泉」になるケースもあります。
もし、人員や予算がぎりぎりまで活用されていて遊びがなかった場合、プラスアルファの業務改善や新規事業提案は起こるでしょうか?イノベーションのための試行錯誤や他社との協業は可能でしょうか?時間も人手もお金も限られる状況では、正直なところ難しいでしょう。
しかし、そこにスラック=余裕があれば、日々のルーティンに対する改善提案を考える時間も生まれます。新しい製品や技術開発に費やす予算や人手も作れます。1次データ・生データを分析し、新たなマーケティング戦略を立案することも可能かもしれません。
ただの予備ではなく、競争力を強化するために必要な余裕でもある、それが組織スラックのもう1つの見方です。
組織スラックが大きすぎるのは問題
もちろん、スラックは大きければよい、あればあるほどよい、というものではありません。
例えば、余剰資金が多すぎると、その使い方に対するチェックの目が甘くなり、無駄な投資が行われるケースが少なくありません。これは予算も同様で、保守的かつバッファの多い予算を作ってしまうと、その達成のための努力が少なくて済み、最善を尽くしきれていないということもあります。
過剰な組織スラックは、組織の統制、社員の意識、意思決定の質に悪影響を及ぼすこともあります。抱えている組織スラックが適切なのか、常に意識しておく必要があります。
まとめ
経営環境の変化に対する予備の資源として、また競争力強化に必要な余裕資源として、重要な役割を果たす組織スラックについて取り上げました。
最近はVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)の時代とも言われます。現代の経営環境の中、企業が中長期的に維持・成長するために、組織スラックはますます必要不可欠なものになるでしょう。
最適な組織編成の検討、または組織スラックを生み出すための戦略的なアウトソーシング活用や複業人材の活用をご検討でしたら、お気軽にご相談ください。