これからは複業が当たり前になると考える理由②
ここ数年、複業(副業)解禁が徐々に本格化し、一部の大企業でも複業が認められ始めていますが、まだ大多数とは言えない状況です。
ただ、複業はこれからの時代に必要となり、そう遠くない将来、複業を認めている会社の方が多い社会になると思っています。
そんな想いもあり、pfworkは、“複業”を1つのキーワード・1つの特長として、企業支援に取り組んでいます。
なぜ複業が必要なのか。複業によって企業が、個人が、社会がどう良くなるのか。複業について考えていることを、いくつかの投稿に分けて書いておきたいと思います。
前回は外部環境の変化という切り口からまとめました。今回は、「企業にとってのメリット・デメリット」という視点から考えた、複業が必要になる理由についてです。
企業の「複業(副業)解禁」の動き
企業が「複業(副業)解禁」に動く流れは、確実に強まっています。これまで、いくつかその動きを加速される出来事がありました。
- 2016年、ロート製薬が複業(副業)解禁(これまで、ベンチャー企業やIT系企業での複業解禁はありましたが、よく知る大企業の複業解禁は社会にそれまでとは異なるインパクトを与えました)
- 2018年、政府が示す「モデル就業規則」の中で、副業(複業)が原則として可能となる記述に改定(政府としても、複業を推奨する姿勢が明らかになりました)
以降、複業(副業)を容認する企業は確実に増えています。現在のところ、大企業ではソフトバンクやヤフー等のIT系企業に留まらず、NTTドコモやキヤノン、コニカミノルタ、みずほ銀行、新生銀行、日産自動車、アクセンチュア、三菱地所なども複業(副業)を解禁しています。
企業にとっての複業(副業)容認メリット
では、複業解禁によって、企業にとってどのような影響があるのか。まずはメリットを挙げていきます。
人材採用力の向上
複業を容認することで、人材採用面においてプラスの効果が見込めます。
新卒採用・中途採用、どちらにおいても「当社は自由な働き方を推奨しています。その一環として複業も容認しています。」というメッセージは、プラスにこそなれ、マイナスに働くことは考えにくいです。
「学生時に起業した会社には引き続き関わりたい。でもこの企業にもぜひ入社して貢献したい」「家業の手伝いがあるけど、それも認めてくれるなら入社したい」など、多様なニーズに応えることで、複業がネックで入社を断念する人材を出さないことが可能でしょう。
複業の導入がもう一段進めば、週4勤務・週3勤務・週2勤務や業務委託契約など、多様な雇用形態が選択できるようになるため、採用する人材の選択肢をさらに広げることも可能になります。
人材育成への寄与
複業は、コストゼロの研修ともいえます。
企業は多かれ少なかれ、社員教育に投資を行っています。新入社員研修、基幹職研修、役員研修、語学研修、PCスキル研修、ロジカルシンキング研修、OJT研修など、その種類は多岐に亘ります。これには、相応のコストがかかっています。
一方、複業は、社員が・主体的に・業務時間外で・ビジネス等を通じて、知識やスキル・新たな視点・人との繋がりを身に着けてきます。
企業としてかかっているコストはゼロですが、「実際のビジネスを通じた社員の成長が勝手に促進される」だけでなく、「自社内では身に付きにくいものも獲得できる可能性がある」ため、複業は費用対効果に優れた人材育成手段とも捉えられるでしょう。
イノベーションの促進
近年、企業がオープンイノベーションを求める動きが強まっています。WeWorkに代表されるようなコワーキング(co-working)スペースを活用する理由の1つとしても、他企業との共創・オープンイノベーションが挙げられています。
複業解禁によって、社員は自社の外に目を向けることになり、違ったビジネスの世界で経験を積むことになります。複業を通じて、自社では身に付きにくいスキルや新たな視点を獲得できる可能性があります。
そんな外部からの知見を得た社員が、社内に還元し事業と結び付けていくことで、これまでになかった発想・イノベーションの発生が期待できるでしょう。
業務改善の促進
イノベーションだけでなく、日常業務の改善に繋がる可能性もあります。
複業を行うことでスキルアップし、業務処理スピードが向上することももちろん考えられます。さらに、時間への意識が高まることで、いかに仕事を迅速にこなせるか、取り組み方の工夫や仕組み化することで効率化できないかといった思考が習慣化され、業務改善への取り組みが強化されることも考えられるでしょう。
ブランディング効果
複業解禁が話題になって以降、複業家として活躍する人材がメディア等で取り上げられるケースが増えてきています。マルチタスクな人材、イノベーションを起こす人材、業務を効率的にこなせる人材、様々な観点で注目されているのでしょう。
複業をしている人材が必ずしもそういった人材ばかりかというと、残念ながらそうではないというのが現実だとは思いますが、それでも、社内外問わず貢献している人材が生まれているのも事実です。
こういった人材が自社から生まれることで、自社のイメージアップに繋がります。
自社人材の印象アップ、社名の広告効果など、広告費ゼロのブランディングにも繋がる可能性があるでしょう。
企業にとっての複業(副業)容認デメリット
複業(副業)解禁の流れが確実に来ているとはいえ、まだ後ろ向きな企業が多いのも事実です。それにはデメリット面を懸念する向きもあると考えられます。
デメリットとしてよく挙げられるのは、以下のような要素です。
- 労務管理の困難性(複業先との労働時間通算など、管理の手間が増える)
- 愛社精神が薄れる懸念
- 退社リスクの懸念(複業から起業へ繋がるのではないか)
- 利益相反の問題
- 日常業務への支障
確かに、これらはデメリットとして考えられます。ただ、一定程度の対策は可能なものも多いです。
例えば労務管理。現行の法制度では、「自社:雇用+他社:雇用」だと労働時間を通算する必要があり、さらに社会保険の取り扱いの問題も出てくるため、管理の煩雑さが増してしまいます。
この問題は、まずは複業先の形態を業務委託とするか、あるいは個人事業主とするなど、上記管理の対象外とする形態に絞ることで回避可能です。可能な範囲から段階的に複業を容認していくことが対策となるでしょう。
利益相反や日常業務への支障については、複業申請時の誓約や日々のモニタリング、発生した際の処罰規定によってマネジメント可能な範囲だと考えられます。
愛社精神については、外を知ることでむしろ高まることも大いに考えられますし、そういった企業であることがどんな時代でも求められているとも言えます(愛社精神が薄まってしまうから複業禁止というのは、自社への自信がないことの裏返しと捉えられてしまうリスクがあります)。
他社を知ることで、自社の恵まれた人材や環境、事業の面白みなどを再発見し、そこで貢献したいという思いが強くなることも多々あるでしょう。
最後に退社リスクの可能性ですが、これは確かにあると思います。それゆえに、企業としての考え方に大きく影響を受けるポイントだとと考えています。
- 複業が起業に繋がっても、それが社員にとっての幸せならむしろ歓迎する
- 複業が起業に繋がって人材が流出するのは好ましくないが、メリットの方が大きいと判断する
- 複業によって人材が流出する可能性が少しでもあるなら複業は解禁しない
それぞれの立場・考え方があるでしょうし、一概にこれが正しいとは言えないところです。
今後複業を容認する企業が増えてくると「複業を解禁しないことによるデメリット」の影響が高まってくるとも考えられるため、2点目のようにメリットの方が大きいと判断する企業が徐々に増えてくるのではと予想しています。
まとめ
「企業にとってのメリデメ」という観点から、“複業”が当たり前になる理由をまとめてみました。
複業による人材採用力の向上、人生育成への寄与、イノベーションや業務効率化促進といったメリットは、既述の複業解禁によるデメリット以上に価値があるものだと私は思っています。デメリットを抑制しながら、複業制度をうまく活用していくことがより強く求められる世の中になっていくのではないでしょうか。
“複業”は「個人」「社会」にとってのメリット・デメリットという観点からも、「複業が当たり前になる」と考えています。その理由については「これからは複業が当たり前になると考える理由③」「これからは複業が当たり前になると考える理由④」でまとめていますので、こちらもぜひご覧ください。
なお、pfworkは「複業・副業の始め方ブログ」も運営しています。pfworkとして蓄積した複業のノウハウをまとめることで、「複業を始めたい人」や「最近始めた人」に役立つ情報を提供したいと思っています。複業・副業に関心がある方は、ぜひ「複業・副業の始め方ブログ」もチェックしてみてください。