実はメリットの多いアウトソーシング
人手不足・分業化・経営資源の集中など、様々な要因からアウトソーシングが行われています。何もアウトソースしていない、という会社はむしろ少ないのではないでしょうか。
一方で、アウトソーシングに対して抵抗感を持つ方がいらっしゃるのも事実です。販促活動は自社営業だけで行う、経営戦略立案は経営者ひとりで考えるものだ、など何かしらこだわりを持っている経営者の方も多いのではないでしょうか。
確かに、アウトソーシングすることで業務委託費・外注費は発生します。しかし、上手に活用することでそれ以上のリターン(売上の増加・費用の削減・経営資源の有効活用など)が生まれることも多く、競争優位を築くためにはぜひ有効利用したいです。
今回は、アウトソーシングのメリット・デメリットについてご紹介します。
アウトソーシングのメリット
経営資源の集中
自社の経営資源をどこに割り当てていくかは、どの企業にとっても共通の経営課題です。特に、人材不足が叫ばれる昨今、得意でない業務に人手を割くことは得策ではないでしょう。
得意でない業務を思い切ってアウトソーシングすることで、自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報・時間・知的財産)を得意分野に集中することができます。
得意な分野に人材を割り振り、付加価値を生みやすい領域に投資を集中させ、差別化要素となる知的財産を強化し、時間を最大限活用する。そして、質の高い製品・サービスを供給し、売上増加につなげていく。競争優位を築く上で非常に重要です。
貴重な人材を、自社が得意でない業務や付加価値を生まない業務に充て、二度と取り返せない「時間」という資産を浪費するのは避けたいです。付加価値を生むことができる場所はどこなのか。十分に見極めて資源を集中させていくことが必要でしょう。
外部専門性の活用
「経営資源の集中」は、「自社の経営資源を得意な領域に集中する」ことでした。逆に、不得意なことは、それを得意とする人に任せた方がうまくいきます。
外部専門性とは、簡単にいうと「他社の強み」です。例えば、経費精算ひとつ取っても、外部サービスを入れて効率化し、従来の担当者を他の業務に割り当てることで、組織の人材効率を最適化することが可能です。結果として、かかったシステム利用料以上のコストカットが期待できます。
自社に強みがあるように、他社にも強みがあります。外注費、システム利用料、業務委託費など、「かかるコスト」だけに目を向けるのではなく、その先にある「なくなるコスト」も見据えた判断が必要です。
「餅は餅屋」といわれるように、「外部専門性=他社の強み」を活用することで、コストダウンを図っていきましょう。
アウトソーシングを活用するときの留意点
アウトソーシングはメリットが多く、最大限活用したほうがいいでしょう。一方で、留意すべき点もあります。
ノウハウが蓄積されない
アウトソーシングは、外部の強みを活用するということです。当然、その業務は内部化されないため、いくら時間が経ってもそのノウハウは自社内に蓄積されません。
時間をかけても内製化したい、自社の強みとしたい領域であれば、アウトソーシングの活用は避けるべきでしょう。
ノウハウ流出の可能性
自社の強みの領域、またはそれに密接に関連する領域をアウトソーシングすることで、そのノウハウが外部に流出するおそれがあります。
バリューチェーンのうち、競争優位・差別化要素を作り出す領域については、アウトソースを避けましょう。場合によっては、秘密保持契約の締結も必要です。
外注先の管理
アウトソースしたから任せっきりで大丈夫、ということはありません。
自社が要求している業務内容・サービス内容と、アウトソース先が予定している成果物とが摺り合っていないと、想定していた効果が生まれない可能性があります。また、その摺り合わせの負荷が大きすぎる場合、外注先として適切ではない可能性が考えられます。
初めてアウトソースする際はどうしても手間がかかりがちですが、そこで十分に摺り合わせができるかどうかで品質に差が出ます。アウトソース先の選定と、定期的な打ち合わせ・報告に留意することが必要です。
依存しすぎない
ひとつの外注先ばかりに仕事をお願いすると、パワーバランスに偏りが生じます。
いつも使っているアウトソース先だから頼みやすい、阿吽の呼吸で仕事ができる、というメリットはあります。業務効率化につながる面もあります。
ただ、これは程度問題で、行き過ぎると「依存」になってしまい、「その会社がないと仕事が回らない」という事態に陥ります。価格交渉力に差が生じ、結果として過大なコストを払うことにもつながりかねません。
仕事の効率、成果物の品質、相互の力関係と信頼関係に留意しながら、賢くフェアに活用することが大切です。定期的に外注先を見直す・増やすことも選択肢のひとつでしょう。
まとめ
アウトソーシングのメリットと、活用の際の留意点について紹介しました。以下のポイントをおさえることで、一層意味のあるアウトソーシングが可能になります。
- 経営資源を得意領域に集中させ、付加価値創出・売上増大につなげる
- 他社の強みを活用して、コストダウンにつなげる
- ノウハウを蓄積させたい領域や自社の強みである領域はアウトソーシングしない
- 任せっぱなしではなく、擦り合わせによって品質を担保する
- 依存しすぎず、フェアな関係を築く
中長期的な競争位構築を見据えて、積極的にアウトソーシングを活用していきましょう。
アウトソーシングの戦略的な活用については、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。