厳選!市場分析の基本的フレームワーク3選(その①:PEST分析)
商品特性や売上規模、得意先など、自社のことであればよく知っているけど、業界の現状や顧客の嗜好、競合他社の動向といった外部環境の分析・把握になると心許ない、ということはないでしょうか。
傾向的として、内部分析は実施できている企業が多い一方で、外部分析まで手が回っていない、調査・分析に手間がかかるため実施しきれていない企業が多いと感じています。
相対的に自社の強み/弱みを把握するため、また業界としての機会/脅威を早いうちから捉えるためにも、外部環境の分析は重要です。
今回は「現状分析」のうちの「外部分析」の1つ、「市場分析」について書いていきます。
現状分析の定番フレームワーク
戦略や改善策を考える上で、現状(As-is)を適切に把握することは極めて重要です。現状分析のフレームワークといえば、3C分析・SWOT分析が定番です。
- 3C分析:
Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社) - SWOT分析:
Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)
「市場・顧客、競合」が「機会・脅威」に対応し、「自社」が「強み・弱み」に対応しています。前者が外部分析、後者が内部分析です。
今回は、外部分析の一部、Customer(市場・顧客)分析の超基本的フレームワーク3選!を、3回に分けてご紹介します。1つめはPEST分析です。
市場分析の基本的フレームワーク3選
①マクロ環境:PEST分析 ←今回はこちら
②業界環境 :5フォース分析
③顧客 :顧客分析マトリックス
PEST分析
PEST分析は、マクロ環境を分析するフレームワークです。
- P:Politics(政治)
- E:Economics(経済)
- S:Society(社会)
- T:Technology(技術)
この4つの観点から、企業を取り巻くマクロ環境を分析します。目的は大きく以下2つです。
- マクロ環境の変化を先取りし、ビジネスチャンスを見出す
- マクロ環境の変化を把握し、自社にとっての脅威・課題を探る
Poltics:政治
Politicsは直訳すると政治ですが、広く政治面・法律面からの分析を行います。
政治的安定性、法律や規制の動向、税制の変化等は、ビジネスに大きなインパクトを与えます。国によって異なるのはもちろん、企業単独でどうこうできるものではないため、所与のものとして受け入れる必要があると共に、その動向を事前に分析・把握した上でビジネスプランを立てることが求められます。
例えば、近年の日韓関係悪化は韓国の政権交代がひとつのきっかけだったように思います。韓国から撤退した日系企業も散見されたように、政治リスクは時として企業業績に大きな影響を与えます。米中の貿易戦争もくすぶった状態ですが、関税引き上げもまた大きなリスクです。国内に限ってみても、消費税の引き上げも企業活動に影響しますし、規制緩和によって業界のプレイヤーの顔ぶれが変わることも珍しくありません。
特に海外で事業を展開するような企業にとっては、より大きなリスクになりえます。政治リスク・規制リスクをどう捉え、ビジネスプランにどう織り込むのか。マクロ環境を分析する上でひとつの重要な要素になります。
Economics:経済
Economics:経済面からの分析です。GDP成長率や為替相場、個人消費や設備投資、株価や金利等の変動可能性を分析します。
例えば、海外市場に進出しようとする際、日本の経済成長率と比べてその国はどれくらいの成長率が見込めるのか、その結果需要の伸びはどの程度なのか、蓋然性はいかほどか等を分析していきます。また、輸出入ビジネスは為替相場の変動によって業績に大きな影響を受けるため、将来の為替水準の予測がマストになります。原材料の一部を海外から輸入している場合も同様です。
内需を中心としたビジネスでも、国内の個人消費・設備投資動向の見立てから、需要予測を行うことが不可欠です。
経済面からマクロ環境分析を行い、その今後のリスクをできる限り洗い出した上で、アップサイドリスク(ビジネスチャンス)の把握とダウンサイドリスクの極小化が実現できるような施策を検討していきます。
Society:社会
社会、というと少し広い感じがしますが、人口構成、宗教、文化、教育、ライフスタイル等の環境分析を行います。
例えば、日本は少子高齢化が進展しているため、高齢者向けビジネスが伸びるだろう、逆に子供の絶対数が減るので既存の子供向け市場は衰退するかもしれない(必ずしもそうでないものはありますが)、といった予測が立てられます。
また、宗教面・文化面で自社ビジネスが受け入れられるのか、顧客の平均的な教育レベルはどの程度なのか(国によっては識字率なんかも大きな差があります)、特有のライフスタイルはあるのか、等は海外でビジネスする上で必須の分析項目になります。
現在の、そしてこれからのSocietyを分析・予測し、ビジネスを拡大・新規展開していくことが求められます。
Technology:技術
最後はTechnology:技術面からの分析です。これが最も分かりやすい側面かもしれません。
現在、第4次産業革命の真っ只中だと言われます。AI(人工知能)、ナノテクノロジー、ブロックチェーン、IoT(モノのインターネット)、3Dプリンター、自動運転など、様々な革新的技術が実用化されつつあります。よく「淘汰される職業、生き残る職業」といった特集も組まれており、その影響度の大きさを感じます。
少し遡ると、コンピューター、インターネットの登場で世界は大きく変わりました。いわゆるGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)はそれまでなかったにも関わらず、今では時価総額の世界ランキング上位を占めています。
このように、技術革新はビジネスに大きな影響を与えます。最新技術動向に目を配り、自社市場の代替リスクや、ビジネスチャンスを見落とさないように取り組むことが求められます。
まとめ
以上、PEST分析の概要について取り上げました。政治、規制・税制、経済、社会・文化、技術といった大きく4つの側面からマクロ環境を分析し、何が自社にとって機会なのか・脅威なのかを把握することで、ビジネス上のリスク・課題・そしてチャンスを見つけやすくなります。特に新市場への展開を考える場合、まずは動かしがたい環境の把握として、PEST分析を行うことが必要です。
その②では、業界環境分析のフレームワークとして5フォース分析を取り上げたいと思います。