中小企業の優位性|こだわり・関係性・スピードの競争戦略

コロナウイルスの影響により、多くの中小企業が困難に直面しています。自粛期間が長引くほど、資金繰りに窮する企業は増えてくるでしょう。様々な支援策が打ち出されていますので、有効活用してなんとかこの時期を乗り越えて頂きたいと切に願っています。

足許の状況では、どうしても大企業の安定性・資金余力に目が行きがちですが、本来であれば「小さいからこその優位性」は間違いなくあります。

今回は中小企業の優位性(大きくないからこその優位性)をテーマに書いていきます。

大企業の優位性

まずは、大企業の優位性について簡単に整理します。以下がすべてではありませんが、規模の違いが生み出す優位性を考えたときに、影響の大きいものをピックアップしています。

マス・量のマーケティング

大企業の強みのひとつは、まさにその「規模」です。扱い商品が多い、販売している数が多い、展開しているエリアが広いなど、規模が圧倒的に大きいのが特徴です。もちろん、財務上の規模も強みです。

使える広告費にも違いはありますが、仮に同じ広告費をかけたとしても、規模が大きければ均される範囲も広いため、ひとつの商品・ひとつの店舗にかけた費用は少なくなります。

そのため、中小企業でかけられる広告・プロモーション費用には限りがありますが、大企業ではTVCMなどの大々的なプロモーションが可能です。結果として知名度も高まり、「みんなが知っている」という安心感も生まれます。

規模の優位性が働くマス向けの「量のマーケティング」では、大企業に優位性があります。

規模の経済・範囲の経済

規模の経済とは、生産量が増加することによって、単位あたりの費用が減少することです。範囲の経済とは、取り扱う製品の種類が増加することで、個別に生産するよりも安く済むことです。

大企業は、この規模の経済・範囲の経済を働かせることで、費用削減を図っています。費用削減は価格優位性につながるため、価格競争に対する耐性がつきますし、利益を上げやすい構造をつくることができます。

大量生産されるような商品、製品そのもので差別化がしにくいものについては価格競争になりやすく、プロモーション力の差も相まって大企業優位となることが多いです。

中小企業の優位性

規模の優位性では不利な立場にある中小企業ですが、「小さいからこその優位性」が確実にあります。

「市場の成熟化」「消費者ニーズの多様化」が叫ばれて久しいですが、ニーズが、市場が細分化されればされるほど、規模を活かした効率的なアプローチは難しくなります。

中小企業は、この隙間を、ニッチな市場を狙って自社の強みを強化することで、規模に負けない経営が可能です。

こだわり・専門性

中小企業は、大企業に比べて扱う技術・製品・サービスの範囲がどうしても狭くなります。

ただ、狭いから劣っているかというと、決してそんなことはありません。狭いからこそ深い技術やノウハウ、独自性を持っている中小企業は多いです

例えば、私の家の近くに「たい焼き屋さん」があります。小さなお店ですが、皮にも餡にもこだわりがあって美味しいですし、毎日日替わりのメニューも用意するなど飽きさせない工夫もされています。結果として、(たい焼きを毎日食べる人が多いとは思えないのですが)毎日行列ができ、繁盛しています。近くに駅隣接の商業施設やスーパー、コンビニもありますが、「たい焼きが食べたい」という人は、規模に関係なく、こだわりの感じられる「たい焼き屋さん」を選ぶのでしょう。

狭い範囲であっても、こだわりを磨く、専門性を深めることで、個性が生まれます。その個性が、細分化された顧客ニーズとマッチすることで、規模に左右されない優位性を築くことが可能です。

関係性の構築・コミュニケーションの深化

中小企業が競争優位性を築くうえで、もうひとつ大切なポイントとして関係性の構築・コミュニケーションの深化があります。

自分の家の近所で、または職場近くで、「馴染みの店」がある人も多いのではないでしょうか。馴染みだからこその安心感や、また行きたくなる空気感が生まれることも多いです。

先ほど例としてあげた「たい焼き屋さん」も、やはり顧客とのコミュニケーションを大切にしています。来店の際の声掛けも意識されているようで、待っている間の会話を楽しんでいる常連さんも多いようです。

規模が小さいからこそ、地域に密着し、顧客とのコミュニケーションを密にすることができます。不特定多数に対してではなく、自分個人に対してサービスをしてくれていると感じれば、愛着もわきますよね。大企業も1on1マーケティングを重視する時代になっていますが、限られた範囲であれば、大企業以上に顧客との関係性を築くことは十分に可能でしょう。

こだわりの商品を支持してくれる「こだわりをもつ顧客」との関係性を強化することで、強烈な支持獲得・固定客化できれば、立派な競争優位となります。

スピードと柔軟性

最後はスピード柔軟性です。

規模の大きさの弊害として、情報伝達・意思決定スピードが遅くなることがあげられます。変化を捉えるスピード、対応策を考えるスピード、意思決定を行動に移す際のスピード、あらゆる局面で、中小企業はスピードの優位性を発揮するチャンスがあります。

変化に対応する柔軟性も同様です。規模が大きいほど、関わる人数が多いほど、「変わること」への抵抗が大きくなります。規模が限られているからこそ、状況を見極めた柔軟な変化が可能になり、これも競争優位になりえます。

技術の深化、ニーズの変化が顕著な今だからこそ、中小企業のスピードと柔軟性は大きな武器となるでしょう。

まとめ

中小企業の優位性として、こだわり・関係性構築・スピードと柔軟性をとりあげました。

資金力や広い範囲でのブランド力など、無いものに目を向けるのではなく、自社の得意な領域でのこだわりをもった商品・サービスの提供限られたエリアでの深い関係性構築技術やニーズの変化に対する柔軟でスピード感ある対応によって、競争優位性を発揮することが可能です。

自社の得意な領域・こだわり・ケイパビリティは何なのか、ターゲットとする市場はどこなのか、スピードと柔軟性は保てているかなど、少し絞った観点で事業を見直すことで、気付かなかった強みと機会を発見できると思います。

Follow me!